2022.09.16

アート思考 とは何のためにある?デザイン思考との違いや、具体例を交えながら解説。イノベーションを生む可能性が高まるトレーニングまで。

ART×BUSINESS

アート思考 とは?

「 アート思考 」。

最近この言葉をよく聞く、という方も多いのではないでしょうか。
どうやら「デザイン思考」の次に出てきた概念らしい。「アーティスト的な思考回路」のことが「アート思考」ーーーそう言われても、それがわからないし、どう役に立つのか不明確ですよね。

ここではアート事業を自ら立ち上げ、現在多数の企業に向けてアート思考ワークショップを実施しているNOMALの平山が、「何故流行っているのか」「デザイン思考とは何が違うのか」「ビジネスにどう生かすのか」「トレーニング法は」など、これを読めばひと通りわかるように解説していきます。 アート思考 それでは、早速ですが「アート思考」とは何でしょうか。

後ほど詳しく解説しますが、結論を先に言うと「主観を持ち、パッションを持って行動すること」そのものがアート思考であると言えるでしょう。

「思考というより行動なんじゃないか?」と思った方。それは正解で、アート思考は行動して初めて結実する思考法だといえます。

昨今「アート思考」は、「イノベーションが産むためのもの」や「ビジネスの役に立つ」などと言われますが、原点は子供から大人まで誰もが持っているような「好きに従った思考回路」がベースになっています。

「なんか今日は右の道に行ってみようかな」「青より赤が好きだな」「BBQが好きだから今日はBBQにいこう」など、一見ビジネスと関係ない自分自身の主観が、より優れたアート思考を鍛えるために大切です。

ある意味このような自分勝手な思考法が、なぜビジネス界で取り沙汰されているのか? 具体的なビジネスへの活かし方を説明する前に、なぜアート思考が今流行っているか、デザイン思考と比較しながら考えてみましょう。

アート思考 が何故今流行っているのか?デザイン思考との比較

まず「デザイン思考」について触れておきましょう。 デザイン思考とは「課題の本質を見つけて、それに対する解決策をユーザー視点で導き出すこと」。多数のフレームワークがあるので、ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

フレームワークの多くは、「ユーザー起点」で物事が進みます。 まずユーザーにとっての現場の課題をできるだけ多く抽出し、その中から課題の本質を見つけて、解決策をディスカッションしていきます。 アート思考 チームで行うフレームワークが多いことも特徴です。デザイン思考は現時点での情報整理や、チームメンバーの課題に対する視点をプロットするには有用な思考法と言えるでしょう。

「課題の本質を見つけて、解決策を導き出しせるなら、ビジネスはそれで良いんじゃない?」

そう思われる方もいらっしゃるでしょう。 ところが、実はこれでは大きなイノベーションは生まれないのです。 ここではイノベーションを「誰も認知していなかった新しい市場を作る・もしくは掘り起こすこと」と定義してみます。

デザイン思考が大きなイノベーションを生みづらい理由

なぜデザイン思考ではイノベーションを生み出しにくいのでしょう。理由は大きく分けて3つ考えられます。
1つ目は、チームで解決策を探ると最終的なアウトプットが平均をとったものになりがちだから。多数派に流されて、突飛なアイディアは潰れてしまいがち。尖ったアイディアも丸く研磨されてしまいます。 アート思考 2つ目は、現状起点で議論が始まるため、結局現状の延長で収まってしまうから。
馬車のある時代に「もっと早く走るにはどうしたらいい?」と人に聞けば「早く走る馬がいればいい」と誰もが答えたでしょう。「エンジンを搭載した、自動で走る機械があれば・・・」など、車を発想をした人はとても少なかったはずです。

3つ目は、ユーザーの課題起点の解決策は、多くの同業他社が同じところにたどり着いている可能性が高いから。つまり、ライバルが多く、価格競争などに巻き込まれてしまう可能性が高くなります。

認知心理学の第一人者であるドナルド・ドーマンは、イノベーションについて調査した中で「急進的なイノベーションで、社会のニーズの解析をベースにされていたものはひとつもない」という言葉を残しています。 つまり、今までのイノベーションはユーザーの分析である「デザイン思考」からは生み出されていないことがわかります。

「確かにデザイン思考でイノベーションは起こせないかもしれない。ではイノベーションはアート思考から生まれたのか?」

という疑問が湧いてきますよね。 次のセクションでは、アート思考がイノベーションに生きたのでは?と思われる偉大な先人の例をお伝えします。

実は著者的には、アート思考は何もイノベーションだけのものではなく、人生にとっても大事な効果があるのですが・・・それは後述することにします。

アート思考が活きた、3つのイノベーションの例

具体的な例を挙げて、アート思考が活きたと推測されるイノベーション事例をお話しします。ここではイノベーションを生み出すためのある法則を導き出すことができます。それでは、事例からお話ししましょう。

①Apple社のiPhone

  アート思考言わずと知れたスティーブ・ジョブズが開発したiPhoneですが、Apple社は顧客調査をどこよりも正確に行なったからiPhoneを生み出せたのでしょうか。いえ、そうではありません。 むしろ顧客のニーズを聞いていたら現在のiPhoneは生み出されなかったでしょう。事実、Apple社は顧客調査をほとんどしない企業として今も有名です。

ここでiPhoneが生み出されたのは「優れたデバイスを生み出す」という同社の命題と、ジョブズの持つ「世界の人がポストPCのような端末を持てたら良い」という主観が噛み合い、その情熱に周りが動かされたから。 結果はもちろん誰もが知る通り、iPhoneは21世紀を代表する大きなイノベーションとなりました。

②SONYのウォークマン

当時の盛田会長が推し進めた「ウォークマン」の開発。 きっかけは実はとてもパーソナルなもので、当時の名誉会長であった井深大が、旅客機内で綺麗な音で音楽が聴けるデバイスを作ってほしいと、事業部長であった大曾根部長に依頼したところから始まったそう。

当時録音機能が必要とされていた世の中で、「ただ音楽を持ち歩ける」ことに機能を特化させたウォークマンは、周囲から売れないとされていたといいます。 順風満帆ではなかったであろうウォークマンの開発中に、当時のテープレコーダー部の大曾根部長はこういった、とSONYのサイトには書かれています。

「冷静に検討を重ねると、難しい問題はいくらでも出てくる。だから検討する前に、『えいやっ』と返事をしなくちゃ話は始まらないよ」
出典:https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/2-06.html

この言葉は、チームで話し合わずに自分のパッションを大事にしなさい、と行っているようにも聞こえます。 スピード感を持って生み出されたウォークマンは、井深名誉会長だけではなく、日本中の人々の生活を豊かなものにしました。

③バルミューダ社のBALMUDA The Toaster

最後に、バルミューダ社の例をお話ししましょう。同社が開発したトースター・「BALMUDA The Toaster」は注水口が搭載し、そこに水を入れることでパンが中からふっくら焼き上がるというトースターです。 価格は通常のトースターの倍以上である27000円前後。それでもスマートなデザインと、いつものパンが一手間で生まれ変わるという体験が、顧客を魅力して行きました。以降、トースターに端を発したバルミューダ社は、次々と魅力的な製品を世に送り出しています。

さて、こうした新しいトースターの誕生のきっかけは顧客インタビューではありません。ある日、代表取締役の寺尾玄氏は、バーベキューに行った日のこと。

雨の中で焼いた食パンがいつもより美味しく感じた、という経験から「湿気が重要ではないか? 」という発見へつながり、今までの世の中にない魅力を持ったトースターの開発へとつながったのです。

いかがでしたでしょうか?

上記の事例全てが顧客調査から生まれたものではないことがわかります。また、どうやらチームが話し合ったから生まれたものでもなさそうです。
極めてパーソナルな主観に基づいた行動、すなわち「アート思考」と、業界の課題が結びついたときに、大きなイノベーションの種が生まれていることがわかりました。

アート思考 を実践するには何が必要か

それでは、アート思考を実践するには何が必要なのでしょうか。あまりに概念的すぎて難しいですよね。
アート思考はフレームワークのような方法論ではなく、日々を過ごす中で少しずつ培っていくものだと著者は思っています。そしてこれをビジネスに生かすためには、以下のような項目が必要になってくるでしょう。

【個の深掘り: アート思考 の醸成】

①主観を育てる

主観に良し悪しはありませんが、ビジネスにする以上多くの人を巻き込まなければいけません。その主観自体が批判を目的としたものでなかったり、自信を持って言語化できるものだとすれば、魅力的な主観だと言えるでしょう。 とはいえ、壮大な主観を持つ必要もありません。必ずしもビジネスに関係していなくても大丈夫です。

「こちらの方が気持ちいいな」「こちらのほうがなんか好きだな」と直感的に選ぶ時が誰でも日々何回もあるはず。直感で選んだ後に「なぜ自分はこっちを選んだのだろう?」と選択の結果を俯瞰して見てみましょう。直感と論理を反復運動することで、主観はどんどん研ぎ澄まされたものになっていきます。

②個人的な行動に移すこと

行動に移してみることもとても重要です。思うだけではなく、実際に人に伝えたり、ささやかでも仕事に主観を反映させたりしてみてください。注意しなくてはいけないのは、あくまで最初は個人的な行動にするべきだということ。ここで他人に相談すると、純然たる主観ではなくなってしまいます。  

【個から社会へ:ビジネスにつなげていくために】

③直面する課題を頭の隅に置き続けること

先程、「主観を軸にした行動=アート思考」と「業界の課題」が結びついたときにイノベーションの種が生まれる、と記述しました。その当事者がパッションを持って周囲を巻き込んだときに、実際に大きなイノベーションが生まれます。

これらが結びつくには、課題を頭の隅に置き続ける必要があります。そして注意すべきなのは、この点と点が結びつくタイミングがいつなのかは、誰もわからないということです。

皆様の中にも経験がある人がいるかもしれませんが、あるとき突然10年前の出来事が意味を持ってきたりすることがあります。まさに点と点がつながり、線になる瞬間です。

④優れた主観の数を増やすこと

その結びつきを少しでも増やすためには「優れた主観の種類を増やす」ことも大切です。そういった主観をボーリングのピンに例えてみましょう。 アート思考 多く並べれば並べるだけ、どの方向から飛んでくるかもわからないボールに当たる確率が上がります。偶然の幸運をキャッチしやすくもなるでしょう。

⑤相手の意見を聞く柔軟さを持つこと

イノベーションの種が生まれたとしても、周囲の人間を巻き込まないと仕事を進めることができません。アート思考で生まれたコアの部分は優れていても、ユーザーに伝える方法が間違っていると何も伝わらない可能性もあります。

「どう伝えるか」はアート思考ではなく、マーケティングの問題でもあります。ここまできたら謙虚に相手の意見を取り入れることとても大切です。

【個から社会へ: アート思考 を発揮できる環境であるために】

さて、この個人的な思考法は、社長や経営者にとっては有用かもしれませんが、立場によっては発揮しづらい思考法だと思います。だからこそ、アート思考による発言がしやすい環境であることも大切です。 アート思考 この際にはあらかじめ一定のルールを設けておけば、振り回されすぎることなくその種を育てることができるかもしれません。「何か突飛なことを部下が言ってきたぞ・・・」と頭ごなしに否定するのは非常に勿体ないことです。

例えばとあるゲーム会社では、何かアート思考により思いついた場合は、二人の同僚を誘い、自分のプロジェクト参加するよう説得できたらプロジェクト化するというルールがあるようです。 これにより当事者の主観への共感性や、パッションの度合いを測ることができると言えるでしょう。

Googleでは業務時間のうち20%の時間を自分のプロジェクトに充てるという「20%ルール」が存在しました。これにより社員は業務以外の可能性に目を向けることができたのです。

日々できる! アート思考 のトレーニング方法とは

さて、ここからは簡単なアート思考のトレーニング方法をお伝えします!日々実施するので深い自己理解にもつながるアート思考。本当に些細なことなので、ぜひ試してみてくださいね。

①自分の過去で嫌だったことを振り返る

今まで人から言われて嫌だった言葉はありますか?イライラしたシチュエーションは?
その中の裏返しに、主観の影が眠っていることが多いです。記憶に残る嫌だった言葉を思い返してみましょう。もちろん、記憶に残る嬉しかったことも「なぜ嬉しかったのか?」を再度深掘りしてみましょう。

②好き・嫌いを自覚する

毎日忙しく仕事をしていると、自分の好き・嫌いは疎かになり、正しい・正しくないにとらわれがちです。ですが、日々の小さい「好き・嫌い」に敏感になってください。 例えば赤と青のハンカチが目の前にあり、青のハンカチを何気なく選んだとき。「なぜ自分は青を選んだのだろう?」と理由を後から考えてみてください。本当に些細な選択の中にも、大事な主観が潜んでいます。

③余白をもち思うままに行動してみる

日々の中にほんの少しの余白を持ち、その余白で自分がどういう行動や思考をするか観察してあげてください。理性的な判断をしたり、予定を詰めすぎるとアート思考を発揮する余地がなくなってしまいます。

それでは長いアート思考の記事も、いよいよ次が最後のセクションです!!
 

より良い人生につながる アート思考 の効能

長々と書いてしまいましたが、アート思考について少し身近になりましたでしょうか。

アート思考がアート思考と呼ばれるのは「主観を持ち、パッションを持って行動すること」を地でいくのがアーティストだからです。この場合の行動とはアーティストにとっての作品作りに他なりません。

さて、アート思考はビジネスでイノベーションを生むだけのものではなく「よりよく生きる」ために大切な考え方でもあります。 主観に基づいて判断を積み重ねるため、自己理解に繋がり、成功体験が起こればストレートに自己承認につながります。結果的に自分の直感や判断に無自覚に自信が持てる、自律性がありながらも自由な人間へと近づくことができるのです。

まずは些細な好き・嫌いを見つめ直すことから。 明日の朝、起きたらあなたは何をしますか?その行動を、ぜひ見つめ直し、自分と再度向き合ってみてください。


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