2023.02.16

アート思考とは?イノベーションを生む思考法のトレーニングやデザイン思考との違いを解説

ART×BUSINESS

アート思考とは何か

「 アート思考 」。最近この言葉をよく聞く、という方も多いのではないでしょうか。

「デザイン思考」の次に出てきた概念で「アーティスト的な思考回路」のことが「アート思考」ーーーそう言われても、どう役に立つのか不明確ですよね。

ここではアート事業を自ら立ち上げ、現在多数の企業に向けてアート思考ワークショップを実施している著者の平山が、「何故流行っているのか」「デザイン思考とは何が違うのか」「ビジネスにどう生かすのか」「トレーニング法は」など、ひと通りわかるように解説していきます。 アート思考

アート思考 とはゼロイチを産む思考法

それでは、早速ですが「アート思考」とは何でしょうか。

「アーティストが作品作りの際に用いる思考法」であり、噛み砕いて言うと「自分目線で自由に発想する」ことがアート思考です。

「アート思考」は、「イノベーションを産むもの」や「ビジネスの役に立つ」などと言われますが、もともとは子供から大人まで誰もが持っているような「好き・嫌い」というシンプルな思考がベースになっています。

それでは、このある意味自分勝手な思考法が、なぜビジネスで話題になっているのでしょうか? 具体的なビジネスへの活かし方を説明する前に、なぜアート思考が今流行っているか、デザイン思考と比較しながら考えてみましょう。

アート思考が何故流行っているのか?デザイン思考との比較

デザイン思考は「他者目線」、アート思考は「自分目線」

まず「デザイン思考」について触れておきましょう。

デザイン思考とは「課題の本質を見つけて、それに対する解決策をユーザー視点で導き出すこと」。多数のフレームワークがありますが、フレームワークの多くは、「ユーザー起点」で物事が進みます。 まずユーザーにとっての現場の課題をできるだけ多く抽出し、その中から課題の本質を見つけて、解決策をディスカッションしていきます。 アート思考 デザイン思考は現時点での情報整理や、チームメンバーの課題に対する視点をプロットするには有用な思考法と言えるでしょう。

対してアート思考は、ユーザー起点ではなく自分視点の発想が全て。アプローチが全く逆の思考法なのです。現在アート思考が流行っているのは、この思考法が常識を打ち破るイノベーション発想に必要だと言われているからです。  

デザイン思考がイノベーションを生みづらい理由

デザイン思考ではイノベーションを生みづらい理由は大きく分けて3つあります。

1つ目は、チームで解決策を探ると最終的なアウトプットが平均をとったものになりがちだから。多数派に流されて、突飛なアイディアは潰れてしまいがち。尖ったアイディアも丸く研磨されてしまいます。 アート思考 2つ目は、現状起点で議論が始まるため、結局現状の延長で収まってしまうから。 車がなく馬車があった時代に「もっと早く走りたい」という要望があれば、誰もが「早く走る馬を手配しよう」と提案したでしょう。「エンジンを搭載した、自動で走る機械を作ろう!」など、車を発想をした人はほぼいないはず。現状の延長の発想はどうしてもイノベーションが生まれづらいです。

3つ目は、ユーザーの課題起点の解決策は、同業他社が同じところにたどり着いている可能性が高いから。つまり、ライバルが多く、価格競争などに巻き込まれてしまう可能性が高くなります。

認知心理学の第一人者であるドナルド・ドーマンは、イノベーションについて調査した中で「急進的なイノベーションで、社会のニーズの解析をベースにされていたものはひとつもない」という言葉を残しています。 つまり、イノベーションはユーザーの分析を起点とする「デザイン思考」からは生み出されていないことがわかります。  

アート思考が活きた、3つのイノベーションの例

それではここから具体的な例を挙げて、アート思考が活きたと推測されるイノベーション事例をお話しします。ここではイノベーションを生み出すためのある法則を導き出すことができます。それでは、事例からお話ししましょう。

①Apple社のiPhone

  アート思考言わずと知れたスティーブ・ジョブズが開発したiPhoneですが、Apple社は顧客調査をどこよりも正確に行なったからiPhoneを生み出せたのでしょうか。いえ、そうではありません。

むしろ顧客のニーズを聞いていたら現在のiPhoneは生み出されなかったでしょう。事実、Apple社は顧客調査をほとんどしない企業として今も有名です。

ここでiPhoneが生み出されたのは「優れたデバイスを生み出す」という同社の命題と、ジョブズの持つ「世界の人がポストPCのような端末を持てたら良い」という主観が噛み合い、その情熱に周りが動かされたから。

結果はもちろん誰もが知る通り、iPhoneは21世紀を代表する大きなイノベーションとなりました。

②SONYのウォークマン

当時の盛田会長が推し進めた「ウォークマン」の開発。

きっかけは実はとてもパーソナルなもので、当時の名誉会長であった井深大が、旅客機内で綺麗な音で音楽が聴けるデバイスを作ってほしいと、事業部長であった大曾根部長に依頼したところから始まったそう。

当時録音機能が必要とされていた世の中で、「ただ音楽を持ち歩ける」ことに機能を特化させたウォークマンは、周囲から売れないとされていたといいます。 順風満帆ではなかったであろうウォークマンの開発中に、当時のテープレコーダー部の大曾根部長はこういった、とSONYのサイトには書かれています。

「冷静に検討を重ねると、難しい問題はいくらでも出てくる。だから検討する前に、『えいやっ』と返事をしなくちゃ話は始まらないよ」 出典:https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/2-06.html

この言葉は、チームで話し合わずに自分のパッションを大事にしなさい、と行っているようにも聞こえます。 スピード感を持って生み出されたウォークマンは、井深名誉会長だけではなく、日本中の人々の生活を豊かなものにしました。

③バルミューダ社のBALMUDA The Toaster

最後に、バルミューダ社の例をお話ししましょう。同社が開発したトースター・「BALMUDA The Toaster」は注水口が搭載し、そこに水を入れることでパンが中からふっくら焼き上がるというトースターです。 価格は通常のトースターの倍以上である27000円前後。それでもスマートなデザインと、いつものパンが一手間で生まれ変わるという体験が、顧客を魅力して行きました。以降、トースターに端を発したバルミューダ社は、次々と魅力的な製品を世に送り出しています。

さて、新発想のトースターの誕生のきっかけは顧客インタビューではありません。ある日、代表取締役の寺尾玄氏は、バーベキューに行った日のこと。 雨の中で焼いた食パンがいつもより美味しく感じた、という経験から「湿気が重要ではないか? 」という発見へつながり、今までの世の中にない魅力を持ったトースターの開発へとつながったのです。  

日々できる! アート思考のトレーニング方法とは

それでは、上記の先人のように私たちがアート思考をトレーニングし、発揮するには何が必要なのでしょうか。 アート思考はフレームワークのような方法論ではなく、日々を過ごす中で少しずつ培っていくものだと著者は思っています。

ここからは簡単なアート思考のトレーニング方法をお伝えします!本当に些細なことなので、ぜひ試してみてくださいね。

①自分の過去で嫌だったことを振り返る

今まで人から言われて嫌だった言葉はありますか?イライラしたシチュエーションは? その中の裏返しに、主観の影が眠っていることが多いです。記憶に残る嫌だった言葉を思い返してみましょう。もちろん、記憶に残る嬉しかったことも「なぜ嬉しかったのか?」を再度深掘りしてみましょう。

②好き・嫌いを自覚する

毎日忙しく仕事をしていると、自分の好き・嫌いは疎かになり、正しい・正しくないにとらわれがちです。ですが、日々の小さい「好き・嫌い」に敏感になってください。

「こちらの方が気持ちいいな」「こちらのほうがなんか好きだな」と直感的に選ぶ時が誰でも日々何回もあるはず。直感で選んだ後に「なぜ自分はこっちを選んだのだろう?」と選択の結果を俯瞰して見てみましょう。直感と論理を反復運動することで、主観はどんどん研ぎ澄まされたものになっていきます。

例えば赤と青のハンカチが目の前にあり、青のハンカチを何気なく選んだとき。「なぜ自分は青を選んだのだろう?」と理由を後から考えてみてください。些細な選択の中にも、大事な主観が潜んでいます。

③余白をもち思うままに行動してみる

日々の中にほんの少しの余白を持ち、その余白で自分がどういう行動や思考をするか観察してあげてください。理性的な判断をしすぎたり、予定を詰めすぎるとアート思考を発揮する余地がなくなってしまいます。

さて、一見ビジネスに関係がないように思いますよね。アート思考のトレーニングの心構えとして重要なのは、点と点が結びつくタイミングがいつなのかは、誰もわからないということです。

皆様の中にも経験がある人がいるかもしれませんが、あるとき突然10年前の出来事が意味を持ってきたりすることがあります。まさに点と点がつながり、線になる瞬間であり、それこそがイノベーションと言えます。そういったことが将来あるかもしれない、と信じて直感的に選択していくことをお勧めします。

さて、ではこの個人的な発想である「アート思考」を起点に、会社で事業化するにはどうしたら良いのでしょうか?
 

アート思考を組織で生かすには

それでは、アート思考を会社や組織で生かすにはどうしたら良いのでしょうか。

アート思考は「自分」起点だからこそ個人的なものに終始してしまい、ビジネスに転換しづらいというデメリットがあります。アート思考とデザイン思考をバランスよく発揮し、イノベーションを起こすためにはどういった環境が必要なのでしょうか。

アート思考を発揮するための環境づくりとは

アート思考は、社長や経営者にとっては有用かもしれませんが、立場によっては発揮しづらい思考法だと思います。だからこそ、アート思考による直感的な発言がしやすい環境であることも大切です。 アート思考 この際にはあらかじめ一定のルールを設けておくことが大切です。「根拠もない、前例もない突飛なことを部下が言ってきたぞ・・・」と頭ごなしに否定するのは非常に勿体ないことです。

例えばとあるゲーム会社では、何か思いついた場合は、二人の同僚を誘い、自分のプロジェクト参加するよう説得できたらプロジェクト化するというルールがあるようです。 これにより当事者の主観への共感性や、パッションの度合いを測ることができると言えるでしょう。

Googleでは業務時間のうち20%の時間を自分のプロジェクトに充てるという「20%ルール」が存在しました。これにより社員は業務以外の可能性に目を向けることができたのです。  

より良い人生につながる アート思考 の効能

長々と書いてしまいましたが、アート思考が少し身近に感じてもらえたら幸いです。

アート思考がアート思考と呼ばれるのは「他者ではなく自分目線で自由に発想する」を地でいくのがアーティストだからです。この場合の行動とは、アーティストにとっての作品作りに他なりません。

さて、アート思考はビジネスでイノベーションを生むだけのものではなく「よりよく生きる」ために大切な考え方でもあります。 主観に基づいて判断を積み重ねるため、自己理解に繋がり、成功体験が起これば深い自己承認につながります。結果的に自分の直感や判断に無自覚に自信が持てる、自律性がありながらも自由な人間へと近づくことができるのです。

まずは些細な好き・嫌いを見つめ直すことから。

明日の朝、起きたらあなたは何をしますか?その行動を、ぜひ見つめ直し、自分と再度向き合ってみてください。 ・・・・ 弊社では、以下のアート思考研修を行っています。興味のある方は、ぜひお問い合わせフォームよりお問い合わせください。

  • マネージャー向けアート思考研修
  • Well-Beingを目的としたアート思考研修
  • ウォールアートを社内に入れることを目的としたアート思考ワークショップ

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